新薬で特許を取得するまで

「風邪薬」を買いにドラッグストアに行くと陳列されている風邪薬はたくさんの種類です。ありすぎて、どれを選んだらいいの?!と思うほど豊富な種類ですが、風邪薬に限らず胃腸薬・便秘薬・目薬・湿布・鎮痛剤とものすごい豊富な種類が店頭には所狭しと陳列しています。病院で処方された医薬品も、同じ成分で安い価格帯のジェネリック医薬品を選ぶことも出来ます。ジェネリック医薬薬は後発医薬品になりますが、先発医薬品の特許権が消滅すると後発医薬品を作ることができます。

ちなみに、本当にたくさんの種類がある医薬品ですが、医薬品は製造業の中でもとても利益率が高い産業です。ひとつの製品に対して製造原価がとても安いので、画期的な新薬を開発に成功すれば、マーケットは世界が相手になるので年間数千億円を売り上げることも決して不可能ではありません。但し、画期的な新薬の開発には、9年~17年という膨大な時間と300億円以上とも言われる莫大な研究開発費が必要になります。製薬会社の命運を左右するとも言える新薬の開発ですが、当然ながら複数の研究開発を並行でしながら研究開発を行なっています。

どれぐらい製薬会社が新薬の研究開発費を予算として割り当ててるのか?!という点では、日本国内のほかの産業と比べても研究開発費はとても高い水準になっています。精密機器・自動車産業などが企業売上高に占める研究開発費の割合は約5パーセント前後になっていますが、製薬業界の場合は研究開発費の割合が19パーセント以上と突出しているのがお分かりになると思います。

新薬の開発

新薬の研究開発費は、企業売上高の約19パーセントを占めるという巨額の資金面が必要なだけではなりません。新薬の開発するまでの時間は、とてもとても膨大な時間になっています。まず最初にターゲットとする新薬の研究開発プロジェクトを立ち上げてから、臨床試験が繰り返されていきます。近年は研究機関などでも、動物実験そのものを最小限に抑える取り組みもなされいます。動物を使う場合には、科学的、また試験や実験、研究を目的とした実験生物で動物実験が行なわれ、それから人を対象にした臨床試験が繰り返されます。(治験)そして規制当局による承認審査を経てから、ようやく市場に出るようになりますが、それまでの過程の期間で最低でも10年間は必要になります。あくまでも10年というのは、最低必要な期間なので、新薬の開発がスムーズに行かず手間取ってしまえば、新薬の開発に20年近くかかることももちろんあります。

薬は最終的に、人間に投与します。試験管の段階で良好、動物実験でも良好な結果が繰り返し出た。臨床試験の最終段階が治験になりますが、人体に投与してみたら動物の時には見られなかった副作用が発生したり、効き目が感じなかった。というケースもあります。その場合には、再びやり直しになります。このように、研究開発したものが、数年後に確実に「新薬」になるのではないという、不確実性という高いハードルが新薬の研究開発にはあるのが、他の製造業の研究開発とは違う大きな部分といえるでしょう。新薬の開発に成功する確立は、一つの医薬品となる候補となる物質を発見してから、1万分の1以下ともいわれています。

製薬会社の新薬開発の流れ

新薬の開発をするのは、多くの科学者との共同作業になります。特に治療のために投薬したり調剤したりするのではないので医師や薬剤師の資格が必要ということではなりません。医師が関与してくるのは、アドバイザー的な役割になっていて、臨床治療や共同で研究したりする場面での役割になっています。新薬を開発する研究者の出身学部は多岐に渡っていて、農学部・理学部・工学部・薬学部・環境科学部など様々です。

シーズを探す

新薬の研究は、医薬品が疾患に対して作用するアプローチを決めて、疾患に作用を起こす物質となるシーズ(種)を探します。目的とする物質は1つではありません。近似した化合物もあわせるとシーズの数は100以上いえ、数1000個にも上るので、その中から最も効用が高いものをスクリーニングで選びだします。そして、さらに派生化合物を合成して、薬効だけではなく安全性も含めて分析して試験します。「前臨床試験」をするのは、実験用動物のラット、サル、イヌ、ウサギなどを使いそこで基準をパスした物質が一定の審査を経て次の「治験」へと進みます。

治験

次の段階では人体に被験薬を人に投与する治験になります。治験をすることで、被験薬の有効性と安全性を確かめます。この治験のプロセスは、第I相から第IV相までの4段階で行なわれることが多くなっています。

第I相試験(フェーズ I)
自分の意思で志願した健常な成人を対象にしています。探索的な試験になっていて、被験薬を最初は少量から段階的に増量していき、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(副作用など)について検討することを目的としています。
第II相試験(フェーズ II)
この段階では、第I相試験の結果をふまえて、比較的軽度で少数例の患者を対象にしていて、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う試験になっています。この試験の主な目的は、用いる用法・用量を検討することですが、効性・安全性を確認しながら徐々に投与量を増量させたり、プラセボ群を含む3群以上の用量群を設定して用量反応性を検討したり、試験の目的に応じて様々な試験デザインが採用されます。
第III相試験(フェーズ III)
新薬になるかもしれない被験薬を使用するだろうという患者を対象にして、効性の検証や安全性の検討を目的とした、さらに大きな規模で行なわれる試験です。数100例以上の規模になることもあるため、多施設で共同で行う場合が多くなっています。抗がん剤の場合には、製造販売後に実施されることが多くなっています。
第IV相試験(フェーズ IV)
販売された後にも試験があり、この試験は製造販売後臨床試験と呼ばれていて、実際に市販されて幅広くしようされることで、第III相試験までに検出できなかった予期することができなかった副作用や有害事象などを検出するのを目的としています。この第IV相試験は、通例では販直後調査及び市販後調査によって行なわれます。

フェーズⅠからⅢまでの試験全てに対して、良好な結果を示すことができた被験薬だけが、試験成績をまとめて医薬品の製造販売承認申請が行われます。医薬品医療機器総合機構(厚生労働省の外郭団体)による審査を受けて、承認されると新薬の「医薬品」として販売されることが可能になります。

治験コーディネーター

治験コーディネーターはCRCと言われていてます。CRCはClinical Research Coordinatorの略です。。治験コーディネーターの役割ですが、治験を行う医師と治験に参加する患者の仲介役になります。治験の対象者となる患者さんに、治験の内容を伝えるほかに、不安や心的負担を軽減するための相談相手としての役割もあります。患者さんの不安な気持ちをしっかり受け止めて気持ちを理解して相談に乗るほかにも、患者さんからの質問に対して的確にこたえるというのも大切な役割になります。

治験コーディネーターの業務ですが、治験に参加する患者さんと治験を行なう医師の仲介役だけではありません。治験のスケジュール管理や、症例報告書を作成する補助もCRCの業務になります。治療薬との因果関係を問わずに、患者さんの有害事象の記録をとり報告をする必要があります。

治験コーディネーターに特別な資格はありませんが、コミュニケーション能力が求められる上で「看護師」「薬剤師」「臨床検査技師」などの資格を保有している人がCRCに転職する人が多くなっています。

新薬の特許

新薬を開発には、製薬会社が莫大な費用と時間をかけて開発します。医薬品と認められたら開発者の権利(知的財産権)を守るために、特許を取得することが認められています。

医薬品の特許には4種類の特許が存在しています。「物質特許」は、新しい化学構造の物質が医薬品に使用できることを発見した際に与えられます。「製法特許」は、すでに存在している医薬品を新しい製造方法を発見した際に与えられます。「製剤特許」は、カプセル剤や錠剤といった既存の医薬品を、新しい製剤で処方することで有効だということを発見した際に与えられます。「用途特許」は、既存してある医薬品から新しい効能や効果を発見した際に与えられます。

4種類ある特許の中でも、製薬企業にとって特に重要で、最も価値が高いのは「物質特許」になります。この「物質特許」を取得するためには、莫大な費用と長い期間が研究開発に要するため、「物質特許」だけではなく、それ以外の特許を取得することで製薬会社が自社の知的財産を増やしていきます。

取得した特許権の存続期間は特許を出願から20年と特許法で定められています。ところが、特許出願をするのは通常のケースでは、治験を行う前の段階で特許の出願を行います。そのため、その開発や審査に10~15年ほどかかることを特許法で決められた20年から差し引くと、実際に新薬を製薬会社が独占して販売できる期間は5~10年ほどに過ぎないことになります。

そのため、新薬の開発や審査などといった新薬の安全性を確保するために、かなりの時間を割く必要がある状況を配慮して、国では特許の延長を認めています。製薬会社が「特許発明の実施をすることができない期間」を申請することで、上限は5年ですが特許の延長を認めています。

この新薬の物質特許が切れた後に、登場するのが「ジェネリック医薬品」です。後発医薬品メーカー側は、新薬と同じ有効成分で新薬がもつ効能・効果、用法・用量が同一で新薬と比較すると低価格な医薬品として、「ジェネリック医薬品」を発売します。

ただし、物質特許の期間が切れたらすぐにジェネリックとして販売できるわけでもありません。まだ特許が残っている場合があるからです。「物質特許」以外の特許です。新薬を開発した製薬会社は、先発医薬品メーカーとして自社の利益を守るために、特許を何段階に分けて取得することで、自社の新薬として独占して販売することができる期間を延ばすといった戦略をとることもあります。

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